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歯周病って言われてしまいました。歯周病を治すには?

歯周病とは?

歯周病という病名はもはや一般的になりつつありますが、具体的にどのような病気なのかをはっきりと答えられる方は少ないかもしれません。「歯槽膿漏や歯肉炎と何が違うの?」そんな疑問を持っている方も多いかと思います。さらにとりあえず歯科医院に通い歯石を取れば、歯周病は完治すると思われているのではないでしょうか?実際のところ歯周病治療は複雑で難しく、様々な治療が必要になる場合があります。そんな歯周病について、歯周病が何かということから治療の内容まで本記事では解説させていただきます。

歯周組織について
歯周組織とは

まず歯周病を発症する歯周組織という場所について解説します。歯周組織とは上図の歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質の4つの部位を指します。書いて字のごとく、歯の周囲に相当します。歯根の周囲を覆うセメント質という歯の一部には線維が埋まっていて、これを歯根膜と呼びます。この線維が歯を支える歯槽骨と歯を繋いでいます。その歯槽骨の上を歯肉が覆い、また一部歯を覆って歯に付着しています。歯周病はこれらの部位に起こる疾患です。

歯周病

歯周病は、口腔内細菌の塊であるプラークが歯と歯肉の境目に付着直後に始まり、プラークの付着から1~2週後に早期の歯周組織の変化が訪れます。具体的にはプラークが付着すると、その毒素により軽度の炎症が始まります。炎症の開始とは赤くなる、腫れる、火照る、痛むという兆候が現れるということです。ここではまだ歯肉炎と呼ばれる状態です。

プラークの付着から3~4週が経過すると歯周病が確立され、歯周組織の破壊がゆっくりと始まります。それからの進行には個人差がありますが進行期に入り、歯根膜や歯槽骨の破壊が開始され、歯周炎と呼ばれる状態へ移ります。この一連の流れを歯周病と呼び、歯周組織が破壊されていきます。

歯周病治療の流れ

歯周病治療は4種類の治療で進めていきます。まずは歯周基本治療と呼ばれる、一般的な歯石の除去などから外科処置までを行い、残せなかった歯は抜歯するのでその部分を補う治療を行い、最後にメンテナンス・SPTと呼ばれる継続的な管理を行います。

歯周基本治療
応急処置

歯周病は静かに進む印象を持たれている方が多いかもしれませんが、場合によっては痛みを伴います。例えば痛みがあり、膿が溜まっている場合は切開排膿という膿を外に出す応急処置を行います。その他にも抗菌薬という細菌を殺す、あるいは細菌の活動を抑える薬を投与し、急性症状を取り除くところから治療が始まることがあります。

モチベーション

歯周病治療において最も重要なのはセルフケアです。そのため歯周病の原因、症状、治療の必要性をしっかりと理解し、適切なセルフケアを継続する意思を固めることが重要です。歯ブラシやデンタルフロス、タフトブラシなどを使用してプラークを自身で管理する必要があります。

プラークコントロール

プラークコントロールは患者自身が行うセルフケアと歯科医師や歯科衛生士が行うプロフェッショナルケアがあります。プロフェッショナルケアでは歯科衛生士によるプラーク除去に加え、歯の表面を研磨してプラークが再度付着することを予防する処置などがあります。

スケーリング

スケーリングとは歯面に付着したプラーク、歯石や着色を除去することです。歯石の表面はざらついていて、さらなるプラークの付着を招きやすくなります。そのため歯石の除去により歯周病の進行を防ぐことができます。

スケーリング・ルートプレーニング

上記のスケーリングを行うと、腫れていた歯肉が元に戻り、歯肉が下がります。これにより見えなかった部分の歯石が見えてくるため、再度スケーリングを行います。さらに歯石がついていた歯根表面のセメント質は細菌に毒されていますから、取り除く必要があります。合わせて再度歯石が歯根表面に付着しないように、表面を磨く必要があります。そのためにルートプレーニングという治療を行います。スケーリングもルートプレーニングも鎌状の器具で歯の表面を削り取るような処置になります。

虫歯治療

完璧な口腔内を作るために虫歯の治療も済ませます。

適合していない被せ物や詰め物の修正や除去

適合していない被せ物や詰め物はプラークの温床になったり食べカスが溜まりやすくなります。そのため形を修正する、あるいは不可能な場合は作り直します。

一時的な被せ物や義歯の装着

被せ物ができるまでの間、一時的に噛めない状態が続くと困るので仮の歯や入れ歯を作ります。

噛み合わせの調整と歯の形の修正

上記のような炎症を引き起こす原因を取り除いた後に、歯の揺れなどにより歯周組織が傷付いていることが疑われる場合、噛み合わせを調整します。調整のために歯を削りますが、噛み合わせの高さは原則変わりません。

一時的な歯と歯の固定

一時的に隣の歯と連結することにより、揺れている歯に噛む力が与えるダメージを分散させる治療です。

抜歯

歯根の先まで歯槽骨が吸収されている場合や、揺れがあまりに強い場合、あるいは歯根の深い部分に虫歯があったり歯根が割れている時は歯を抜きます。

以上が歯周病の基本の治療になります。歯科医院に通院を始めると回数が多いと思っていらっしゃる方も多いかと思いますが、歯周病は治療の種類が多いためご来院いただく回数が増えてしまうのです。

歯周外科治療

歯周基本治療を終えても歯と歯肉の間の隙間、歯周ポケットが4mm以上ある場合や、出血がある場合、あるいは歯周組織の形のためにプラークコントロールが悪い場合などは外科的にアプローチします。麻酔をかけてメスで形を整えたり、歯周組織を再生する手術があります。

その他にも最近では歯周組織再生療法というのが盛んです。例えば骨の移植であったり、セメント質と歯根膜を再生させ、骨と歯を歯根膜の線維で結合させる手術があります。後者の有名なものがGTR法です。奥歯の枝分かれした歯根が剥き出しになっている症例に有効で、スケーリング・ルートプレーニングと比較して高い治療効果が得られます。

口腔機能回復治療
咬合治療

噛み合わせを調整し、歯周組織にダメージを与えないようにします。

被せ物やブリッジ、入れ歯による治療

噛める口腔内を作るために、失った歯を被せ物やブリッジ、入れ歯で補います。

メインテナンス・SPT

症状が安定するとメンテナンスに移行します。目安としては、歯の染め出しをして、染まる部分が20%以下なったときで、病状が治癒か安定した後の治療になります。

治癒

歯周組織が治癒した状態とは、歯肉の炎症や歯肉からの出血がなく、歯周ポケットの深さが4mm未満で、歯の揺れも正常であるときのことを指します。メンテナンスに移行するためにはまず治癒することが大前提です。

病状安定

病状の安定とは、歯周組織のほとんどが健康に回復したけれど、一部悪いところが残っている状態を指します。悪いところが残っているといっても、病気が進行していない状態で休止しているとき、病状が安定しているといいます。基準は歯周ポケットの深さが4mm以上でも出血がなく、奥歯の枝分かれした歯根が出ていて、歯が揺れている状態でも病状安定と言えます。

メインテナンス

治癒した歯周組織を維持するための健康管理をメインテナンスと呼びます。患者本人のセルフケア、歯科医院での動機付けやプロフェッショナルケアの三本柱からなります。プロフェッショナルケアにはスケーリングや研磨、プラーク除去などが含まれます。

SPT(歯周病安定期治療)

病状安定の歯周組織を維持するための治療はSPTと呼ばれます。メインテナンスで行う内容の他に枝分かれした歯根が出ている部分や深い歯周ポケット、歯の揺れへの対処を行います。

最後に

歯周病治療は治癒あるいは病状安定後、メインテナンスまたはSPTを継続していきます。間隔はリスクが高い場合1ヶ月から始め、状態が安定してきたら3~6ヶ月に1度となります。一般的には3ヶ月とされています。

歯周病と言われたら、セルフケアとプロフェッショナルケアを継続することになります。「治る」という表現が「元の若い歯肉に戻る」ことを指しているのであれば「歯周病は治ります」とは言えませんが、症状をなくす、あるいは安定させることは可能です。歯周病を治すには?何より患者様が努力を継続することが重要です。歯周病治療は歯科医療従事者と患者様で二人三脚にならなければ成立しないのです。

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