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歯周病にかかりやすい人ってどんな人?必ずかかる?

歯肉、歯根膜、セメント質、そして歯槽骨といった歯の周りの組織である歯周組織に炎症が起こっている状態を歯周病と呼びます。炎症が歯肉だけにとどまっている場合を歯肉炎と呼び、歯槽骨やセメント質まで広がると歯周炎と呼ばれるようになります。歯周病は無症状に進行していくことが多く、気がつけば歯が揺れ始め、歯を失う原因となります。15-24歳が20% 、25-34歳で30% 、35-44歳で40%、 45-54歳は50%、そして55歳以上は55-60%の方が歯周病にかかっています(日本歯周病学会公表)。

歯周病にはリスクファクター(危険因子)があり、それをもつ人は歯周病にかかりやすくなります。まずは歯周病のリスクファクターについて解説し、その後に対策について記載させていただきます。

口腔内のリスクファクター

歯の表面に付着した、口の中の菌が増殖した塊をプラークといい、プラークを増殖させたり、歯肉の炎症を悪化させたりする要因が歯周病のリスクファクターになります。

歯石

プラークは口の中に放置すると1週間程度で唾液中のカルシウムが沈着し、歯石になります。歯石の表面は凹凸していてさらにプラークがつきやすく、悪循環が続きます。こうしてプラークが増えていくため、歯周病はさらに悪化していきます。

歯並び

歯並びといえば見た目の問題(審美性)だけを気にするかもしれませんが、歯周病のリスクとして口の中に大きく関与します。凸凹した歯並びではどうしても歯ブラシの毛先が届かず磨き残してしまいます。汚れの残りの中の糖分をエサに細菌はプラークを作り出しますから、歯並びに問題があるとプラークが付着したままになるリスクが高まります。その結果、プラークを構成する歯周病菌が歯肉炎や歯周炎などを引き起こします。

また噛み合わせの悪さは一部の歯に余分な負担をかけ、局所的な歯槽骨の吸収を引き起こす可能性があります。そのため歯周病になるスピードが早まり、早期に歯を失うことになりかねません。

不良補綴物

きちんと適合していない被せ物(銀歯や詰め物など)を不良補綴物と呼びます。不良補綴物は歯の境目と被せ物の間に段差が生じていることが多く、この段差にプラークが溜まりやすくなります。そのため適合の悪い補綴物(銀歯や詰め物)は歯周病のリスクファクターといえます。

口呼吸

鼻詰まり、歯並び、口の周りの筋肉が弱いことなどを原因として、口呼吸による睡眠が引き起こされます。唾液が歯肉を自浄作用により洗い流し、歯肉を保護しているのですが、口呼吸は唾液を乾燥させ、この免疫作用を低下させます。このため口呼吸は歯周病に対して歯肉の防御力を低下させます。

食いしばり・歯ぎしり

通常、食べ物を食べるために歯と歯が接する時間は20分程度です。しかしながら食いしばりや歯ぎしりがある人は一晩中歯と歯に力がかかった状態で接触しています。これにより歯を支える骨にダメージが与えられ、骨の吸収が促進されやすくなります。つまり歯周病で骨が吸収することに拍車をかけてしまいます。

生活に関するリスクファクター
ストレス

ストレスは唾液の分泌量を低下させ、歯肉炎や歯周炎に対する抵抗力を低下させます。唾液にはリゾチームやラクトフェリン、免疫グロブリンといった免疫物質が含まれています。リラックスした状態(副交感神経が優位な状態)に分泌される唾液が、ストレスにさらされている状態では興奮した状態(交感神経優位な状態)では分泌量が減少します。そのため歯周病菌に対する抵抗力が低下し、歯周病のリスクが増加します。

食生活

繊維質の多い食品、歯応えのある食品を摂取することが推奨されます。柔らかい食品は歯に付着しやすいため、プラークを増加させる原因となります。また弾力のある食品は食物自体が歯をこすり、プラークをつきにくくします。

ショ糖などはプラークを形成する細菌の栄養素になるため控えることを推奨します。

栄養素のうちタンパク質は非常に重要で、タンパク質が不足すると免疫系の機能が低下し、歯周病の発症リスクが高まります。

リスクファクターとなる全身疾患
糖尿病

インスリンの作用が不十分なために高血糖が慢性的に続く疾患です。網膜症・腎症・神経障害の三大合併症を伴い、QOLを大きく低下させます。コントロール不良の場合は感染症に対して身体が非常に弱くなるため(易感染性)、歯周病のような細菌感染のリスクファクターとなります。

血液疾患

⚫︎好中球減少症

白血球の一種である好中球が異常に少なくなった状態を好中球減少症といいます。がんに対する化学療法や放射線療法の副作用として頻繁に見られます。白血球は免疫を担う主要な細胞ですので、細菌感染に対して非常に弱い状態になります。そのため歯周病のような感染症は、好中球減少症患者では非常に悪化するリスクが高くなります。

⚫︎白血病

正常な血液細胞が作られなくなり、がん化した細胞が無制限に増える病気です。血液細胞による免疫機能が低下するので感染症に対して抵抗力が弱まります。感染症である歯周病は状態によっては激しく悪化します。

骨粗鬆症

閉経後骨粗鬆症は骨代謝に関わる女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下することにより発症します。これにより全身の骨だけでなく、歯を支える歯槽骨が脆くなります。そのため歯周病の進行が促進されます。

以上のようなリスクファクターがありますが、歯周病は予防と治療でコントロールできる疾患です。以下は歯周病の対策について記載します。

歯周病の予防
ブラッシング

歯周病対策はプラークの除去が基本です。そのためには歯ブラシを使用して歯を磨くことが第一です。食後は細菌の活動性が高まるので毎食後、一日三回の歯磨きが理想ですが現実的ではありません。寝る前の一回だけでも丁寧に時間をかけて歯磨きをして完全にプラークを取り除くことが重要です。

歯の磨き方は1ヶ所を20回以上、歯並びに合わせて磨きます。ポイントは毛先を歯の面に当てることと小刻みに動かすことです。力加減は手の甲を擦っても痛くない程度で、刻む幅は5~10mmで、1~2本ずつ磨きましょう。

歯並びが悪い箇所について、特に前歯は1本ずつブラシを縦に当てて毛先を上下に細かく動かしてください。奥歯の背の低い歯の場合は歯ブラシを斜めから入れて噛み合わせの面にブラシの先が当たるようにします。

歯と歯肉の境目は45°の角度に毛先を当てて、歯ブラシを5mm程度の幅に動かします。

プラークのつきやすいところ

・歯と歯の間

・歯と歯肉の境目

・噛み合わせの面

これらの場所には注意してください。

デンタルフロス

デンタルフロスには糸巻き型とホルダー型の二種類があります。どちらもナイロンでできた糸で歯と歯の間を清掃するために使用する器具です。

糸巻き型はまず30~40cmの長さに糸を切り、左右中指の第二関節に巻き付けます。両手の感覚が15cm程度になるまで巻き付けたら、デンタルフロスを左右それぞれの親指と人差し指でつまみ、糸の長さが1~2cmになるように持ちます。歯と歯の間にゆっくりと入れて磨いていき、磨き終えたら糸をずらして次の歯へと移動させます。

ホルダー型は人差し指と親指でつまむようにして持ちます。そして歯と歯の間にゆっくりと入れ、磨いていきます。

勢いよく入れると歯肉を傷つけてしまうので注意してください。

メンテナンス

自身での管理に加え、月に1回や3ヶ月に1回という頻度で歯科医院でのチェック・清掃も重要です。自分での歯磨きでは磨きにくいところや、癖もありますのでプラークの除去に限界があります。そういった箇所を定期的に歯科医院で清掃することで歯周病の対策はより強固になります。また染め出しでブラッシングの行き届いていない場所を自覚することもでき、歯磨きがより上達することや、歯周ポケットの深さを測ることで現在の状態を知ることができるのもメリットです。

またお口の状況に合わせて使用して効果的な歯ブラシなどはさまざまです。かかりつけの歯科医院で担当してくれている国家資格を持った歯科衛生士(予防のプロです)にブラッシング方法や、歯ブラシ、その他歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃用具をカスタマイズしてもらうことで、お口の中の環境をよくすることが可能になります!

まとめ

歯周病に必ずかかるかと聞かれると、完璧なプラーク除去が可能であればNoと答えます。しかし完璧なプラーク除去ができますかと聞かれて、Yesと答えられる方はいないのではないでしょうか。噛み合わせや持病のことも合わせて、歯科医院での定期的なメンテナンスと自宅での清掃を合わせることをオススメします。

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